『殺されなかった』

病院の一室。
真っ白いこの部屋のベッドには、まだやっと小学校に上がったぐらいの女の子が眠っている。
その傍らで二人の看護士がひそひそと、逆にかしましく話をしている。

「かわいそうにね・・・。ショックでしゃべれなくなっちゃったらしいよ。」
「えっ、そんなショックな事って何があったの?」
「知らないの?この娘の家族が、みんな殺されていたの。」
「ええっ?なんで?」
「知らないわよ!でも近所の人が発見したときは皆リビングでめちゃくちゃに畳まれていたの。」
「たたまれていた?」
「お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、体中の骨が全部くだけててぐしゃぐしゃに・・・・・。」
「えぇ・・・・・・・。それでこの子は?」
「この子はその傍らですやすや眠っていたみたいなの。」
「じゃあこの子は家族がみんな死んだ事を知らないの?」
「ええ。さっき少し目を覚ましたときに聞いてみたんだけどまんまりわかってないみたい。」
「そう・・・・・・。辛いね本当のことを話すの。」
「そうだね・・・・・。」
「でもどうしてこんなことになったんだろうね。どう考えても普通じゃない。」
「そうよね。あたしちょっと見たんだけど・・・・、関節じゃないところがありえない方向に曲がっていて、
・・・・・・そう、ほんとにサイコロみたいに畳まれていたの。」
「どうやったらそんなふうにできるの?」
「わからなし。例えば大勢で囲んで畳むとしてもそれは無理だと思うの。
人間の構造はそんなにやわじゃない。」
「そうね。力ずくでできるものじゃない。これを人間がやるには技術がいる。
人間を壊す専門の技術がね。」
「しかも殺された三人を同時に畳んだわけでしょ?家の中に争った形跡はなかった。
リビングで同時に畳まなければできないと思うの。」
「そうかそんな人間を壊すスペシャリストが3人同時にやったか、
一人がやって、大勢がほかの人間を押さえつけていたか。」
「そういえば、整形外科の武藤先生、何かの古武術をやっているらしいよ。」
「あんな熊みたいなサイズの武藤先生ならできるかもね!」
「あはは!三人同時だから武藤3兄弟が犯人?」
「あんなの三人もいたらお母さん大変ね。」
「あっははははは」
「でもさ、この家族のマンションは外部の人が侵入する事が不可能なマンションなの。」
「どういうこと?」
「警察が話しているのこっそり聞いたんだけどね。」
「うん。」
「完全防音でセキュリティは万全すぎるくらい万全。こそっと進入するなんてことはルパンでもない限り不可能らしいの。
セキュリティールームは昨日の午後8:00にこの家族全員が帰宅してからこの家に訪問者はなかった。
そしてそれ以前、午前10:00にこの家族が外出する以前に訪問者はいなかった。
正確には2年前の長男の誕生日に両親が呼んだ訪問サービスの破壊戦隊ハカイダーが訪れたっきり。」
「んじゃあ犯人は2年間潜伏していたハカイダー!」
「馬鹿ね。ちゃんと帰ったところも録画されているのよ。」
「いやそこはうまくカメラの死角を利用してなんとかしたんだよ!
それで2年間ずっと潜伏していた。」
「何で2年も待つ必要があったの?」
「きっとね、本当のこの子のお父さんはアカレンジャーだったんだよ!それで長男の誕生日に
長男の顔を見たくてついついそのままこっそりとクローゼットの中に・・・・」
「熊みたいな男が?無理よ。ていうか何でそんな推理小説みたいな話になるのよ。」
「あはは」
「んじゃあさ、殺しあったてってのは?」
「ありえないよ。そんな強烈な死に方なんてできないよ。」
「じゃあ父親が犯人てのは?」
「ないない。きゃしゃな体してたし。第一最後に自分はどうするのよ。」
でも異常犯罪ではあるよね。非現実的で。」
「もう心霊現象とかしか考えられないんじゃない?」
「非科学的。」
「あはは。昔このマンションがあった場所が刑場だったのよ。
戦国時代の。」
「えー。」
「熊みたいな執行人がたくさんいて、皆で体中の骨を砕く刑だったの。
んでその時処刑された落武者の無念の霊が・・・」
「やめてよ。でもさ、この事件がたとえば普通の殺され方をしていたらね。」
「うん。」
「一番真っ先に疑われるのはこの子だと思うの。」
「そうだね。現場に居合わせたんだからね。」
「この異常性がこの子を犯人候補から外させている。」
「ということは、この子にそういった力があれば、実行は可能、ってこと?」
「まあありえないけどね。」
「魔法よ。この子魔法が使えるの。」
「まさか。」
「きっとささいなことで親に怒られて、『豆腐になって皆いなくなっちゃえ!』って念じちゃったの。
そしたら本当に・・・・・・。」
「だからありえないって!」



その時後ろのベッドから、声が聞こえた。
「どうしてありえないって思うの?」
看護婦は振り返ってベッドを見ると女の子が起き上がって
にんまり、と笑っている。
「それで、箱の中の猫は生きているの?死んでいるの?」

女の子はまるで子供ではない大人のような、
いや、人ではない何か、のような声で言った。
看護士は凍りついたように立ちすくんだ。

「箱の中の世界は、人ならざるものの世界。
猫が生きている可能性をまるで当たり前のように信じるうぬらが、
私には滑稽に見える。なぜ猫が死んだ世界は『ありえない』の?」

にんまりと笑った後、女の子と言った。
「そんなに箱の中が見たいの?
それなら見せてあげる。わが名において、本当の箱の中をみせてあげる。
この部屋を昨日の密室に直結するわ。」
否応もない。そんな空気に看護士の二人は畏怖を感じ始めていた。
そして、女の子は歌うようにつぶやいた。



「さあさ、思い出して御覧なさい。あなたがどんな姿をしていたか。」


ばきばきばき、と不気味な音がする。
彼女の両親と兄だった。
体中の骨が折れているというのに、バランスをうまくとりながら立ち上がっている。
うめき声を上げながら。
逆の部屋の隅のロッカーが震えだして、
中からハカイジャーの赤が出てきた。
熊のように大きな体を揺らして。
いつの間にか部屋には
大きな体をした死刑執行人と落武者、
武藤3兄弟がいた。


そしてそれらは、ふらふらと二人に近づいてくる。
看護士の二人は声すらあげる事ができず、
青い顔をして座り込んでしまった。
それをみた女の子は満足そうに笑い、言った。


「箱の中は魔性の世界。『if』の世界は『畏怖』の世界。『想像』が『創造』の世界。
その数だけ現実は存在するの。
なぜなら、『想像』は想像である証明がされない限り『創造』となる。
あなた方人の子に、『存在』する事を定義できるというの?
愚かな人の子よ。」








黄金の魔女ベアトリーチェ


おわり






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疲れた。
俺なりに少しだけ同人誌。
世界観だけぱくった。
文章量があと2倍あったらもっときれいにまとまるな。
ああああああ・
ちょっと中2なかんじだ。