ちちのち

H君の話。

親父が高校球児で。
しかも優勝しちゃったりして。
世間を騒がせたヒーローで。
でもすぐに就職しちゃって。
結婚しちゃって。


その長男のH君は、小さい頃から
野球漬けの毎日だったんですよ。
毎日毎日練習して。
やっぱりその血を受けついじゃってるから
才能もあって。
リトルリーグでも全国制覇。
中学野球でも負けなし。


当然世間はちやほやするわけです。
賢い子だから敏感にそういうのを感じちゃって。
こうして高いプライドは構築されていく訳です。





H君のじいさんはアイルランド人。
名前はトニービン
プロの野球選手で日本に来日した時に一目惚れした
日本人女性と結婚。
じいさんは若い頃はあんまりぱっとしない選手で
30代に差しかかる頃に才能を開花させた選手だった。
若くして野球をやめた親父とは少し違う。
「負けた時にこそ男の価値が決まるんだよ」
と高校入学前の孫につぶやく。
もちろん負けた事のないH君にはピンと来ない。
ひっひと、トニーじいさんは笑う。




鳴り物入りで名門校に推薦入学。
トニーじいさんの家に居候する事になる。
一応の下積みなどを経て
やはり無敗で迎えた3年生の春の甲子園大会。
誰もがH君のチームが勝つと思ってる訳ですよ。
やる前から王者の風格すら漂ってる。
迎えた準決勝。



その男は2本塁打を打ったが結果は負け。
意外な伏兵に負けてしまった。
決勝は大会前にはあまり名前を聞かない高校どうしの対決だった。




その試合、そして表彰式の様子を
H君は鬼の形相で見つめていた。



H君は、生まれて初めて、負けた。




夏の甲子園大会は負けるわけにはいかない。
負けたくない、と練習に精を出すH君。



そんなある夜、トニーじいさんが庭で素振りをするH君に話す。
H君の親父の話だ。
実は親父も小さい頃から負けなしで。
鳴り物入りで名門高校に入学して。
3年生の春の甲子園大会準決勝で無名校に惜敗したらしい。
寸分違わぬ自分と親父の人生を知るH君。



そして、親父は、夏の甲子園大会で優勝する。



じゃあ自分は?









負けるわけにはいかない。
存在価値、存在意義の問題だ。
親父をどうにかして、超えなければならないと
なかば強迫観念の中で思ったんだ、H君は。










以上ヨタ話。
妄想が多分に入ってます。








なんだか不条理な匂いがする。
しかもあんまり面白くない話になっちまった。
その一家は
その血に刻まれた宿命に
逆らう事はできないんですよ。
野球が駄目なら他、って選択肢すらない。
勝ちと負けだけの世界。


そんなH君の甲子園大会が
今週末にあるんです。
俺は正座して観戦します。
でも見れないんで録画して見ます。


以上妄想話でした。
つまらなかった人ごめんなさい。
眠くて限界です。